広島高等裁判所岡山支部 昭和25年(う)56号 判決
記録に徴すると、被告人が原審相被告人李判吉から買受けた製造たばこは、専売公社の所有で岡山駅長が保管していたものであつて、犯人以外の者に属するから捜査官憲においてこれを押収した上、被害者岡山駅長に仮還付したことが明かである。してみると刑法第一九条によつて沒収できないこと勿論であるが、たばこ専売法第七五条第二項後段に所謂他にその物件の所有者があつて沒収できないときに該当すること明かであるから右規定を適用してその価額の追徴を言渡した原判決は正当である。
なおたばこ専売法第七五条第一項においては「七一条の犯罪に係る製造たばこは沒収する」とあつて刑法第一九条第二項の如き制限規定がないからその物が犯人以外の者に属する場合でも沒収すべきかの如く読まれるのであるが同条第二項後段の規定を対照すると単に沒収するとあるのは刑法第一九条が沒収することを得とし沒収すると否とを裁判官の自由裁量に委せたのに対し、必ず沒収すべく規定したもので他に正当な所有者がある場合でも尚且つ沒収するという趣旨でないことが明かである。尤も本件の場合犯罪に係る製造たばこは他に正当な所有者がある為めその者に還付され、犯罪によつて得た利益を保持しない被告人に対し、更に追徴を科するのは甚だ酷に失するのみならず沒収並に追徴の本旨に反すると思われるが、前記法案の解釈上已むを得ないのである。それ故原判決には擬律錯誤の違法はなく論旨は理由がない。